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創作上の出来事には収まらない... 実在の事件を想起させるロバート・デ・ニーロ主演「タクシードライバー」の文化的価値

ベトナム戦争帰還兵の独白を形式として描いた映画「タクシードライバー」(1976年)は、この枠で以前に取り上げた「グッドフェローズ」(1990年)の監督マーティン・スコセッシの初期代表作であり、ハリウッドメジャーの停滞と独立系若手作家の台頭という、1960年代後半から70年代中盤におけるアメリカ映画の変革を象徴する一本だ。 疎外感を抱えた主人公、トラビスの妄執を名優ロバート・デ・ニーロがリアルに演じ、同時にタクシー運転手を生業とするキャラクターを経て、当時のニューヨーク・マンハッタンが放つ猥雑さと危険性を映し出し、作品は「都市映画」としての性質を併せ持つ。そして主人公がとった凶行を巡るメディアや大衆の恣意的な様を、凄惨なバイオレンス描写で浮き彫りにしていくのだ。 このように本作は多面的でコアとなる要素が多く、特定のジャンルに収まらない印象を受けるだろう。しかし、スコセッシはこの「タクシードライバー」を「ノワール(犯罪)映画」の系譜にあるものだと主張している。事実、主人公のナレーションによって、その時々の感情を詳述する同作の語り口は、1940~50年代に量産されたノワール映画のフォーマットを踏襲したものだ。

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