日常に潜む、どす黒くサディスティックな闇の世界 入門編にしてリンチワールド全開。デヴィッド・リンチの代表作「ブルーベルベット」
#芸能 #韓流・海外スター #コラム 2024.7.24

真っ青な空をバックに、白さが眩しいピケットフェンスに真紅のバラ。消防士の笑顔が印象的な特殊車両がゆっくりと画面を横切り、登校中の子どもたちは秩序よく横断歩道を渡る。まるで絵葉書のように町の平穏な表情を映し出し、「ブルーベルベット」(1986年)は、その名を冠した曲に合わせて幕を開ける。 アメリカ北西部の伐採場の町、ノースカロライナ州ランバートンを舞台に、一人の青年が犯罪に巻き込まれていく展開をスリリングに描いた同作は、異才デヴィッド・リンチ監督(「イレイザーヘッド」、「エレファント・マン」)の持ち味である幻惑的な視覚描写と奇異なドラマとの融合を一つのスタンダードにした。過去数十年で最も影響力を持つ、80年代アメリカ映画を代表するマスターピースの一本だ。