トップスター・柚香光によるピアノの生演奏にも注目の花組公演「巡礼の年~リスト・フェレンツ、魂の彷徨~」('22年花組・東京・千秋楽)
#芸能 #俳優・女優 #コラム 2023.8.3

花組公演「巡礼の年 〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜」は、「ピアノの魔術師」と称される音楽家リストにスポットを当て、振れ幅の大きな生き様を激動の19世紀前半と照らし合わせながら描く。作・演出を担当するのは生田大和だ。サブタイトルの「リスト・フェレンツ」はフランツ・リストの祖国ハンガリーでの名前である。 この作品は、いわばフランツ・リスト(柚香光)の「ほんとうの自分探し物語」である。神業のような演奏と魅惑の容貌で女性たちをとりこにするリストが、時に狂気をはらみつつ、聖と俗の間を振れ続ける。純粋に音楽の高みを目指しつつ、その一方では、パリのサロンのトップに君臨するためなら手段を選ばず、ライバルを打ち負かさずにはいられない。柚香によるピアノの生演奏シーンも見どころだ。 リストを演じる花組トップスター柚香光はこれまで、歴史上知られた人物をよく演じている。本作のリストのほか、ローマの初代皇帝となったオクタヴィウス(「アウグストゥス」)然り、オーストリア皇太子ルドルフ(「うたかたの恋」)然りだ。ちなみにオクタヴィウスもリストも美男として知られていたし、ルドルフはマリー・ヴェッツェラとの心中事件で有名だ。持ち前の美貌と、緻密で生真面目な芸風がそのような役を引き寄せるのだろうか。 主な登場人物たちは皆、リストの「自分探し」に対してさまざまな方向から影響を及ぼす人物である。